Pythonの仮想環境【venv】とその他の選択肢【仮想環境の種類一覧】

Pythonの仮想環境は venv
以外にも複数の選択肢があります。そして、それぞれにメリット・デメリットがあります。
ただ、現実的には 「多くのPythonユーザーが venv
を使っています」。先ずはその理由から見ていきましょう。
なぜ venv
が一番使われているのか?
1. Python標準搭載で追加インストール不要
Python 3.3 が 正式リリースされた、2012年9月29日 からvenv
の導入、仮想環境の公式サポート開始されました。
3.3で導入された主な機能は、この他にも、venv
モジュール(仮想環境の標準化)、yield from
構文(ジェネレータの改善)、faulthandler
(クラッシュ時のトレースバック出力)、ipaddress
モジュール(IPアドレス操作)などがあり、それ以前は virtualenv
が広く使われていましたが、このPython 3.3 を境に、仮想環境の利用がより手軽かつ一般的になりました。
- Python 3.3以降は最初から
venv
が使える
→ 「追加のライブラリが必要ない」という安心感からvenv
が広く使用されています。
2. 軽量で高速・シンプル
python -m venv myenv
のワンコマンドで即環境構築
→ 初心者でも迷わず使える
python -m venv myenv
python
:今使っているPython(例:3.10)-m venv
:venvモジュール(標準搭載の仮想環境機能)を実行myenv
:作成したい仮想環境のフォルダ名
つまり、「myenv」という名前の仮想環境(Pythonが独立した箱)を、このフォルダ内に作ってね」という命令のみで、即環境を構築してくれます。
ポイント | 説明 |
---|---|
Python標準機能 | 外部ツールのインストール不要(すでにPythonに入ってる) |
依存ファイルが最小限 | 必要なランタイム・pipなど最低限だけ作られる |
フォルダ1つで完結 | myenv/ フォルダに環境が全て入るため、削除も簡単 |
数秒〜十数秒で完了 | 仮想環境の生成は非常に高速(特にSSD環境) |
実際につくられるフォルダの構成(Windows例)
myenv/
├── Scripts/ ← 実行ファイル(activateなど)
├── Lib/ ← Python標準ライブラリ
├── pyvenv.cfg ← 仮想環境の設定ファイル
このフォルダがプロジェクトごとに作られるだけなので、削除も「フォルダごと消すだけ」でOKです。
仮想環境venvを使用しない場合に起きるトラブル
venvなら…
仮想環境ごとに分けられるので安全
たvenvなら…
システムPythonには影響しない
どこでPython実行してるのか分からないvenvなら…
明確に「この環境だけ」で管理できるvenvなら…
コマンド1行で完了。簡単。
3. チュートリアルや教材でもよく使われる
- オフィシャルドキュメントや多くのブログ、講座が
venv
ベース
→ ネット上の情報が豊富で学びやすい
他のツールが使われるケース(少数派)
ツール | よく使われる状況 |
---|---|
conda | データ分析・機械学習(Anaconda勢) |
pyenv | 複数バージョン使いたいMac/Linuxユーザー |
poetry | 複数人開発や依存管理を厳密にしたい人 |
virtualenv | レガシーなプロジェクト(またはPython 2) |
※ これらは開発スタイルや目的に応じて選ばれますが、初期導入の敷居は venv
より高め。
実際のユーザー傾向(ざっくり)
ユーザー層 | よく使う仮想環境ツール |
---|---|
初心者・個人開発・教材 | venv (一番多い) |
機械学習・AI開発者 | venv または conda |
バージョン管理したい人 | pyenv + venv |
Python開発チーム | poetry , conda |
最初は venv
で十分
Whisper、Stable Diffusion、画像生成、音声認識などのAIツールを使うなら、ほとんどのケースで venv
で問題ありません。
あとから必要があれば conda
や pyenv
に切り替えることもできます。
なので、「とりあえず動かしてみたい」という場合は、まず venv
一択でOKです!
仮想環境の種類一覧(Python)
仮想環境ツール | 特徴 | 向いている人 |
---|---|---|
venv(標準) | Python標準搭載。シンプルで軽量。 | 初心者、シンプルな用途 |
virtualenv | venv の上位互換。複数のPythonバージョンを扱いやすい。 | venvより少し高度な管理がしたい人 |
pyenv + pyenv-virtualenv | Pythonのバージョン管理と仮想環境を一元管理できる(特にMac/Linux) | 複数のPythonバージョンを使い分けたい人 |
conda(Anaconda) | データ分析・AI用途で人気。Python以外の依存も簡単に管理。 | 科学技術・機械学習ユーザー、Windowsユーザー |
Poetry | 仮想環境 + パッケージ管理が統合された新世代ツール | 開発寄り・依存関係を明確に管理したい人 |
それぞれの解説
1. venv
(標準機能)
- Python 3.3以降に標準搭載
- 非常に軽量、どんな環境でも使える
python -m venv myenv
で簡単作成
迷ったらまずこれでOK。AI系でも問題なし
2. virtualenv
venv
より古くからあり、より柔軟- Python 2 や複数バージョンの管理に向く
pip install virtualenv
で導入
3. pyenv
+ pyenv-virtualenv
- Pythonの複数バージョン管理(例:3.8, 3.10, 3.12)が便利
- Mac/Linuxユーザーに人気(Windowsはやや手間)
pyenv install 3.10.6
→pyenv virtualenv 3.10.6 myenv
AIツールをいろいろ試したい人におすすめ
4. conda
(Anaconda / Miniconda)
- Python + 他の言語依存(Cライブラリなど)も一括で管理
- PyTorchやJupyter、Scikit-learnなどに強い
conda create -n myenv python=3.10
で環境構築
AI・データサイエンス系には最強。ただやや重い
5. Poetry
- 仮想環境 + パッケージ依存管理を自動化
pyproject.toml
に依存を明記、再現性が高い- 複数人でのプロジェクト共有に◎
開発向け。AIライブラリでも使えるが初心者にはやや上級
選択基準
目的 | おすすめツール |
---|---|
Whisperや画像生成を試したい | venv で十分 |
複数のPythonバージョンを使い分けたい | pyenv + pyenv-virtualenv(Mac/Linux) |
データ分析やAIライブラリ全般 | conda(AnacondaまたはMiniconda) |
プロジェクト依存をしっかり管理したい | Poetry or conda |