Real-ESRGAN と GFPGANを連携させる方法とGUIで使えるツール

Real-ESRGAN と GFPGAN
インストール手順や使い方においても Real-ESRGAN(リアル・イーエスアールガン)と GFPGAN (ジーエフピーガン)はかなり似ています。
両方とも Tencent ARC によって開発されており、基本的な実行構成が似ているからです。
本記事では、ローカルでReal-ESRGAN と GFPGANを連携させる方法(導入までの手順を含む)と、GUIでReal-ESRGAN と GFPGANを使えるツールについて書いています。
※既にCUDAとPyTorchのインストールが終わっていて、モデルファイルのダウンロードもお済の方は、
こちらのリンクからGFPGANとReal-ESRGANを連携させる方法にお進みいただけます。
先ずは、ローカルでReal-ESRGAN と GFPGANを使う方法から見ていきましょう。
ローカルでReal-ESRGAN と GFPGANを使う方法
前提環境
- Python(3.7~3.10推奨)Python3.10.6のインストール方法についてはこちらの記事をご覧下さい
- GitGitのインストール手順についてはこちらの記事をご覧下さい
- CUDA(NVIDIA GPUがある場合)
- PyTorch(バージョンはCUDAに合わせる)Pythonで画像生成を始める方法について
Real-ESRGAN や GFPGAN は PyTorch や特定のバージョンのライブラリに依存しているため、専用の仮想環境を作ることで他のプロジェクトと干渉しません。
その為、CUDA環境の構築が楽で、PyTorch + GPU(CUDA)のセットアップが conda
で簡単にできるAnaconda(またはMiniconda)の使用がおすすめです。
比較項目 | venv (Python標準) | Anaconda (またはMiniconda) |
---|---|---|
環境構築の簡単さ | 自分でPython・CUDA・PyTorchのバージョン整合をとる必要あり | conda が自動で依存関係を解決 |
パッケージの管理 | 基本はpip 頼り。複雑な依存関係で詰まりやすい | conda + pip 両方使えて柔軟&強力 |
CUDAの扱い | CUDA Toolkitを手動インストールしてパス設定が必要 | PyTorch+CUDAをconda install pytorch だけで完結できることが多い |
初心者への安心感 | エラー時の自己解決力が必要 | 失敗しにくい構成。エラーも少ない |
仮想環境の切り替え | source venv/bin/activate など | conda activate 環境名 で統一 |
※Anacondaを使用する場合は、CUDAとPyTorchのインストールを個別で行う必要がありません。
ここでは、
1⃣Anacondaをインストールして環境を構築する方法と、
2⃣ CUDAとPyTorchのインストールをして環境を構築する方法
という二通りにの環境構築方法について書いています。
1⃣Anacondaをインストールして環境を構築する方法
Anacondaのインストール
- 公式ダウンロードページ: anaconda.com


任意のアカウントでログインします。


Anacondaの公式ダウンロードページから、お使いのOSに対応したインストーラーをダウンロードできます。


① Anacondaの準備
インストール手順(Windowsの場合)
- ダウンロードしたインストーラー(例:
Anaconda3-2024.10-1-Windows-x86_64.exe
)をダブルクリックして実行します。


2. インストーラーが起動したら、「Next」をクリックします。
3. ライセンス契約画面で「I Agree」を選択します。
4. インストールタイプの選択では、「Just Me(推奨)」を選び、「Next」をクリックします。
5. インストール先フォルダを確認し、必要に応じて変更後、「Next」をクリックします。
6. 追加タスクの選択では、特に変更がなければそのまま「Install」をクリックします。
7. インストールが完了したら、「Next」をクリックし、最後に「Finish」をクリックしてインストールを終了します。
インストール後、スタートメニューから「Anaconda Prompt」や「Anaconda Navigator」を起動できます。
※Anaconda Navigator(GUI)からアップデートを求められた場合は、基本的にはそのまま「更新」してOKです。ただし、すでに構築済みの仮想環境内でパッケージを更新する場合は、conda update
やpip
のバージョン管理に注意が必要です。
インストール確認
Anaconda Promptを開き、以下のコマンドを入力してPythonのバージョンを確認します。
Anaconda Promptは、WindowsでAnacondaをインストールした後、以下の手順で起動できます。
- スタートメニューを開く
- 「Anaconda Prompt」と検索
- アイコンをクリックして起動
※黒いウィンドウが開き、(base)
と表示されていれば、Anacondaの「base」環境が有効になっています。
もしくは、Windowsターミナルを開き、
タブから” ”下矢印をクリックで、Anaconda Promptを選択(Anacondaインストール後に追加されます。)
ターミナル(Windows Terminal)コマンドプロンプト、PowerShell、の開き方
Windowsの場合は、(※Windows Terminal)を開きます。
※Windows Terminal(ウィンドウズターミナル)の起動方法…
コマンドの実行は、Windows標準の「Windows Terminal」を使って行います。
(※コマンドプロンプト(cmd)やPowerShellでも同様に動作しますが、Windows Terminalの方が操作しやすくおすすめです。)
コマンドプロンプト(Command Prompt)とは、Windowsに搭載されているテキストベースのインターフェースです。マウス操作ではなく、キーボードからコマンド(指示)を入力することで、パソコンを操作できます。
Windows Terminal起動方法
- スタートメニューで、左クリック➡ターミナルを起動もしくは、「Windows Terminal」と検索して起動
- デフォルトでは PowerShell または Command Prompt(cmd)(又は、WindowsPowerShell)が開きます
画像生成用途の場合は、Command Prompt コマンドプロンプト(CMD)と相性が良いです。
pip install
や conda
などのモダン開発向けコマンドは、PowerShellと相性が良いです。
※詳しい使用方法や、Windows Terminalの設定方法は、こちらの記事をご覧ください。
Windows Terminalは、タブを切り替えて複数のシェルを使う事が出来ます
- 上部の
+
ボタンから新しいタブを開けます - PowerShell
- Command Prompt
- WSL(Linuxサブシステム)※インストール済みなら
- Azure Cloud Shell(必要な場合)
をクリックすると以下の選択肢があります
※Microsoft 公式も「Windows Terminal」を推奨しているため、当サイトでも記載するWindowsのコマンド実行場所を、コマンドプロンプト(cmd)から「Windows Terminal」に変更致しました。
コマンド入力は間違えるとエラーになることもありますが、慣れると素早く作業ができる便利なツールです。
Macの場合は、(※ターミナル)を開きます。
※ターミナル(Terminal)の起動方法…
Macには「ターミナル(Terminal)」というアプリがあり、これを使うことで、コマンドを入力してシステムを操作できます。
ターミナル起動方法
- **「Command ⌘ + Space」を押して、「Spotlight検索」**を開く
- 検索バーに「ターミナル」と入力してEnter
または、以下の手順でも開けます:
アプリケーション → ユーティリティ → ターミナル
※Linux のターミナルの起動方法…
Linuxでは「ターミナル」が、コマンド操作の基本です。ウィンドウの中でキーボード入力によりシステムを操作します。
Linuxターミナル起動方法
- 1,:
Ctrl + Alt + T
を同時に押す(多くのLinuxディストリビューションで共通) - 2,:アプリケーション一覧から「ターミナル」または「Terminal」で検索して開く
Ubuntu、Fedora、Debianなど、ほとんどのLinux環境に標準で搭載されています。
Macのターミナルと似た雰囲気で、コマンドの使い方もほぼ共通です。
※PowerShell の起動方法…(Windows)
PowerShell(パワーシェル)**は、Windowsに標準搭載されている、より高度な操作ができるコマンドラインツールです。見た目はコマンドプロンプトと似ていますが、より多機能で、プログラミング的な処理も得意です。
PowerShell起動方法
1,スタートメニューで「PowerShell」と検索してクリック
2,Windowsキー + R を押して「powershell」と入力 → Enter
コマンドプロンプトと同様、キーボードからコマンドを入力して操作します。
たとえば Get-ChildItem
(=フォルダの中身を見る)など、PowerShell独自のコマンドもありますが、通常のコマンド(例:cd
やpython
など)も使えます。
※コマンドプロンプト(cmd)の起動方法…(Windows)
Windowsキー + Rを押す
「cmd」と入力してEnterを押す
または、スタートメニューで「コマンドプロンプト」と検索してもOK!
ターミナル(Windows Terminal)を開き、”○○○(ツール名)”と打ち込むと呼ぶ出してくれます。


python --version
また、Anaconda Navigatorを起動して、GUI上で環境やパッケージの管理ができることを確認してください。
Anaconda Prompt を開いて以下を実行(仮想環境を有効化)
conda create -n realesrgan_env python=3.10
conda activate realesrgan_env
※このコマンドを実行する事で、realesrgan 内で仮想環境を使った作業ができる状態になります。
PyTorch(GPU対応)をインストール(※GPUを使う場合。CPU版でもOK)
# 例:CUDA 11.8 対応の場合
conda install pytorch torchvision torchaudio pytorch-cuda=11.8 -c pytorch -c nvidia
2⃣ CUDAとPyTorchのインストール
Real-ESRGANやGFPGANをGPUで高速に動かすには、**CUDA(NVIDIAのGPU用ドライバ)と、それに対応するPyTorch(機械学習ライブラリ)**を正しくインストールする必要があります。
先ずは、その手順から見ていきたいと思います。
1. お使いのGPUがCUDA対応か確認する
まず、ご自身のPCに搭載されているNVIDIA製GPUがCUDAに対応しているかどうか?を確認します。確認方法については、
こちらの記事の冒頭で書いていますので、ご確認ください。

2. NVIDIA GPUドライバとCUDA Toolkitのインストール
GPUを活用するには、以下の2つが必要です。
- GPUドライバ:NVIDIA公式サイトからダウンロード(既に最新版ならOK)
- *CUDA Toolkit:PyTorchのバージョンに合わせたものをインストール
特別な事情がない限り「PyTorchだけ入れればOK」です。PyTorchのインストール時に、自動的に対応したCUDAランタイムが入るため、CUDA Toolkitを直接インストールする必要はありません。
*ただし、CUDA + PyTorchについての詳しい解説とインストール手順については、
こちらの記事をご覧ください。

Real-ESRGANとGFPGANの共通点(インストール・使い方)
インストール手順(共通)
git clone https://github.com/TencentARC/Real-ESRGAN.git # または GFPGAN に差し替え
cd Real-ESRGAN
pip install -r requirements.txt
python setup.py develop
推論コマンドの例(コマンドラインからの実行)
# Real-ESRGAN の場合(画像の高画質化)
python inference_realesrgan.py -n RealESRGAN_x4plus -i inputs
# GFPGAN の場合(顔の修復)
python inference_gfpgan.py -i inputs --face_enhance
違い(中身と出力)
項目 | Real-ESRGAN | GFPGAN |
---|---|---|
主な目的 | 画像全体の超解像(高画質化) | 顔画像の復元・修復 |
入力画像の種類 | 写真やイラスト全般 | 顔が写っている画像 |
出力 | 全体を滑らか&高精細にアップスケーリング | 顔部分を整えて自然な状態に修復 |
モデル名例 | RealESRGAN_x4plus | GFPGANv1.3.pth (face_enhanceあり) |
GFPGANとReal-ESRGANを連携させる方法
GFPGANとReal-ESRGANは連携が可能です。 GFPGANには--bg_upsampler realesrgan
というオプションがあり、背景処理にReal-ESRGANを使うこともできます。
※GFPGAN や Real-ESRGAN の依存関係(ライブラリやモデルファイル)をインストール済みであることが前提です。
python inference_gfpgan.py -i inputs --bg_upsampler realesrgan
意味:inference_gfpgan.py
というスクリプトを実行して、inputs
フォルダ内の画像を処理し、顔の修復には GFPGAN を使い、背景のアップスケール(高画質化)には Real-ESRGAN を使う、という内容です。
pythonPython
スクリプトを実行するためのコマンド。inference_gfpgan.py
顔画像を修復するためのメインスクリプト。GFPGANの推論処理がここに書かれている。-i inputs
-i
は --input
の略で、「入力画像のあるフォルダ」を指定する。ここでは inputs
フォルダ内の画像を処理対象としている。--bg_upsampler realesrgan
背景部分を高画質化する際に使用するアップスケーラーを指定。ここでは Real-ESRGAN を使用して背景もきれいにする設定。
Real-ESRGANやGFPGANをGUIで使えるツール
GUIツール とは、「コードを書かずに、画面上のボタンやメニューで操作できるツールです。
Pythonなどの知識も必要ありませんが、ツールによっては、一旦使用するファイルをダウンロードしてからクラウド上で操作する方法もあります。その際には、AUTOMATIC1111 Web UI にReal-ESRGANやGFPGANが統合されているツールを選ぶ事で設定不要でReal-ESRGANやGFPGANが使用可能です。詳しくは、こちらの記事 で画像生成AIツールの使用環境別の方法について書いていますのでご一読下さい。


1. AI Image Upscaler(GUIフロントエンド)
- GitHubなどで公開されている「Real-ESRGANをラップしたデスクトップアプリ」
- 画像をドラッグ&ドロップ → ボタン1つでアップスケール可能
- Windows対応が多く、初心者でも使いやすい
例:
- Upscayl:Electronベースのクロスプラットフォームアプリ(Real-ESRGAN内蔵)
2. Web UI系ツール(Stable Diffusionと連携)
Web UI系ツール(Stable Diffusionと連携)で Real-ESRGAN や GFPGAN を使用する方法は、いくつかの導入・利用パターンがあります。代表的なものを整理すると、次の 4通り があります。
1. AUTOMATIC1111 Web UI 内蔵の機能として使用する
難易度:低 / おすすめ:◎
- 概要: AUTOMATIC1111 では、
Real-ESRGAN
、GFPGAN
が最初から統合されており、設定不要で使用可能。 - 使い方: 画像生成後、「Extras」タブや、出力オプション(txt2img/img2img)の設定欄から選択。
- 導入: 基本的には
launch.py
実行時に自動インストール(環境によっては手動インストールが必要な場合あり)。
RunPodなどのクラウドGPUを用いた実行環境で使用する方法
こちらは、RunPodというクラウドGPUを用いる方法で、非常におすすめです。クラウド上の高性能GPUを使用して生成が行える上、Real-ESRGAN や GFPGAN が最初から統合済み or オプションで有効化可能なAUTOMATIC1111のWeb UIを使用できます。多少事前の準備が必要ですが、
Python, Git, CUDA環境なども必要無いので、一度準備してしまえばとても快適です。


2. AUTOMATIC1111 Web UI 拡張機能(Extensions)から導入
難易度:中 / おすすめ:〇
- 概要: Web UIのExtensionsメニューからアップスケーラや修復系ツールを追加。
- Real-ESRGAN 拡張(例): 4x-UltraSharp
- GFPGAN 拡張(例):
CodeFormer
を導入し、より高度な顔修復機能として併用可。 - 使い方: 「拡張機能」→「インストール」→「Web UI再起動」で有効化。
3. 別アプリとして単体で導入・使用(後処理)
難易度:中〜高 / おすすめ:△(こだわる人向け)
- 概要: Web UIを使わず、Real-ESRGANやGFPGANの公式リポジトリを使ってコマンドラインから画像処理。
- 活用場面:
- 学習済みモデルの手動更新
- バッチ処理(大量画像の自動変換)
- 実験的なパラメータ調整
- 注意点: Python環境が必要。依存ライブラリの競合に注意。
4. 他のWeb UI系ツール(InvokeAI、ComfyUIなど)で使用する
難易度:中 / おすすめ:〇(ツール依存)
- 概要: AUTOMATIC1111 以外のツールでも、アップスケーラや顔修復ノードを追加して使用可能。
- ComfyUI:
- ノードとして
Real-ESRGAN
やCodeFormer
を使える(GFPGANはやや非推奨)
- ノードとして
- InvokeAI:
- 一部バージョンではReal-ESRGANのサポートあり(GUI設定で有効化)
GUIのメリット
PythonやCLIに慣れていなくても使える
複数のモデルを組み合わせて使えることが多い(例:CodeFormer + Real-ESRGAN)
出力画像をすぐに確認・保存できる
【初心者にもおすすめ!】使いやすいGUIツールまとめ
1. [Upscayl(アップスケイル)]
- 用途:画像の高画質化(Real-ESRGANベース)
- 特徴:
- 完全無料・オープンソース
- 対応OS:Windows / macOS / Linux
- 画像をドラッグ&ドロップ → モード選んで「Upscale」ボタンを押すだけ
- URL:https://github.com/upscayl/upscayl
2. [GFPGAN GUI by Tkalayci]
- 用途:顔の補正(GFPGAN)
- 特徴:
- Windows対応のGFPGAN専用ツール
- コマンドライン不要、GUI操作だけでOK
- 顔を綺麗に補正したい場合に特化
- URL:https://github.com/Tkalayci71/GFPGAN-GUI
3. [AUTOMATIC1111 WebUI(Stable Diffusion + 拡張機能)]
- 用途:画像生成+顔補正+高画質化
- 特徴:
- ブラウザ上で動く多機能なGUI
- 拡張機能でReal-ESRGAN、GFPGAN、CodeFormerを自由に組み合わせ可能
- 画像生成から補正まで一気通貫でできる
- 導入難易度:中級者向け(Python, Git, CUDA環境などが必要)
- URL:https://github.com/AUTOMATIC1111/stable-diffusion-webui
一度構築すれば最強ですが、導入時だけちょっと手間がかかります。
選択基準
目的 | おすすめツール |
---|---|
顔を綺麗にしたい | GFPGAN GUI(または WebUI) |
写真や絵を高解像度化したい | Upscayl(簡単・軽量) |
画像生成と補正を一体でやりたい | AUTOMATIC1111 WebUI |
UpscaylとGFPGAN GUIは、事前にCUDAやPython環境を用意しなくてもすぐ使えます。

