実は違う?「生成AIモデル」と「AIモデル」──LoRAで学ぶ人のための基本知識!

生成AIモデルとAIモデル
AIモデルとは、人工知能(AI)がパターンを学び、判断や生成を行うための仕組みです。
AI(人工知能)が特定の作業やタスクをこなすために訓練された学習済みの数学的構造・関数のことを指します。画像生成や翻訳、音声認識など、AIが出力する“頭脳”部分にあたります。人間にたとえるなら「知識と経験が詰まった脳のクセやパターン」がAIモデルです。
では「生成AIモデル」は何が違うのでしょうか?
簡単に言えば、「生成AIモデル」は新しいコンテンツを“生み出す”ことを目的としたAIモデルです。
画像、文章、音声、動画など、ゼロから“アウトプット”を作る能力があるのが特徴です。Stable DiffusionやChatGPT、Midjourneyなどがこの分類に入ります。
私たちがLoRAを使って行う学習は、まさに**「生成AIモデルの振る舞い」を自分好みにチューニングする**作業です。
つまり、既存の生成AIモデルをベースに、特定のスタイルやキャラクター、世界観を“追加学習”して拡張していくわけです。
このとき対象になるのは、単なるAIモデルではなく、「生成AIモデルの一部(UNetやText Encoderなど)」です。
そしてLoRAは、そのモデルの“癖”や“傾向”に軽量な上書きを加える手法です。
だからこそ、私たちLoRA学習者にとっては、「生成AIモデル」と「AIモデル」の違いを理解しておくことが、自分の作品の仕組みをより深く把握する助けになります。
「モデル」と呼ばれるようになった由来
「モデル(Model)」という言葉は、機械学習の分野で昔から使われてきた表現です。
もともと「現実世界の何かを再現するための数理的な模倣・近似」を意味する言葉で、たとえば気象予報の数値モデルなどと同じ考え方です。
AIの世界では、膨大なデータを学習してパターンをつかみ、未来の入力に対して“予測”を行う仕組みを「モデル」と呼ぶようになりました。
特に「ニューラルネットワーク」などの構造を持つ学習済みAIの出力機構は、その特徴が顕著です。
言語モデル(LLM):ChatGPTなど。テキストの生成・理解が得意。
画像生成モデル:Stable Diffusion、Midjourneyなど。絵や写真のような画像を生成。
音声モデル:音声認識(Whisper)や音声合成(VoiceVox)などに使われる。
動画生成モデル:最近話題のSoraなど。映像やアニメーション生成に対応。
LoRAなどの追加学習モデル:ベースモデルをカスタマイズする軽量な追加学習データ。
AIが一般化し、「プログラムではなく学習済み構造そのもの」を配布・共有・活用する時代になったことで、「AIモデル」という言葉が定着しました。
たとえば「Stable Diffusionのモデルをダウンロードする」といった表現が浸透したことで、プログラムではなく学習結果=モデルファイルそのものを扱う文化できました。
AIモデルの基本的な働き
働きの種類 | 内容 | 具体例 |
---|---|---|
分析・認識 | データを見て理解する | 顔認識、音声認識 |
分類・判断 | ルールに従って判断する | 迷惑メールの自動仕分け |
予測 | 過去から未来を予測する | 天気予報、売上予測 |
生成 | ゼロから創作する | 文章、絵、音楽の生成 |
翻訳 | 言葉を別の言語に変換 | 英語→日本語、音声→文字起こし |
生成AIモデルとAIモデルの違い
AIに関する情報が広まるにつれ、「AIモデル」と「生成AIモデル」という言葉が混在して使われるようになっています。
実はこの2つ、すべての生成AIモデルはAIモデルの一種ですが、逆にすべてのAIモデルが生成AIモデルというわけではありません。
「生成AIモデル」は、画像や文章、音声など新しいコンテンツを“生成”することに特化したモデルを指します。たとえばChatGPTやStable Diffusionなどがこれにあたります。
一方で「AIモデル」という言葉はもっと広い概念で、生成だけでなく、分類、予測、認識、判断など出力が“生成”とは限らないすべてのAIシステムの中核を意味します。
たとえばスパムメールの判定モデルや顔認証システムのAIも、生成はしませんがAIモデルにあたります。
較項目 | AIモデル(従来) | 生成AIモデル(新型) |
---|---|---|
主な役割 | 分析・分類・予測 | 新しいデータを創り出す |
出力例 | 「猫が写っている」と判定 | 「猫の画像を生成」する |
技術構成 | 機械学習、深層学習 | ディフュージョンモデル、トランスフォーマー など |
実生活例 | 顔認識、翻訳、検索精度向上 | イラスト制作、対話生成、楽曲作成 |
- AIモデル:データを「理解・認識」する
➜ 例:「この画像には猫がいます」と判定する - 生成AIモデル:データを「作り出す」
➜ 例:「猫の画像を作って!」と頼むと新しい猫の絵を生成
広義のAIモデル
定義:「大量のデータを学習し、人間のようにパターン認識・推論・生成などを行うアルゴリズムの集合体」
用途・目的によって形や種類が変わる。
「AIモデル」は総称。
「生成AIモデル」はその中の“創造系”の一部。
分類:モデルのタイプ別
種類 | 説明 | 主な用途・例 |
---|---|---|
機械学習モデル | 数値データなどの構造化データを扱う | 価格予測、診断支援(例:XGBoost, LightGBM) |
深層学習(ディープラーニング)モデル | ニューラルネットワークを使った多層構造モデル | 画像認識、音声認識(例:ResNet, VGG, BERT) |
生成モデル(ジェネレーティブモデル) | 新しいデータ(画像・文章など)を「創り出す」AI | Stable Diffusion、GPT、StyleGAN |
自己教師ありモデル(Self-Supervised) | ラベルなしデータから構造を学ぶ | ChatGPT、CLIP、SimCLR などに応用 |
ファインチューン/LoRAモデル | 既存モデルを個別データで「微調整」した派生モデル | LoRA、DreamBooth、ファインチューニング済BERT など |
たとえば画像生成AIの分野では、「GAN(敵対的生成ネットワーク)」や「拡散モデル(Diffusion Model)」といった手法が知られています。


AIモデルの構築ステップ
AIモデルが生まれるまでには、いくつかの段階的なプロセスがあります。
それは、目的を決め、データを集め、学習させ、評価して、調整していくという、手順の積み重ねです。
- データ収集:テキスト、画像、音声など大量の素材を準備
- 前処理:ノイズ除去、正規化、トークナイズなどを実施
- 学習(トレーニング):GPUなどを使って膨大な試行錯誤を重ねる
- 評価・検証:正確性、再現性、安全性をチェック
- 推論・利用:実際のアプリやサービスに組み込む
なお、これらのAIモデルの基盤となるのが「深層学習(ディープラーニング)」という技術です。AIの進化を語るうえで欠かせない考え方です。


モデルの使い方・視点別の分類
分類 | モデル例 | 主な使い方 |
---|---|---|
画像生成系 | Stable Diffusion、StyleGAN、ControlNet、LoRA | イラスト・写真風画像生成、創作支援、広告制作など |
動画生成系 | Sora、RunwayML Gen-2、Pika | 映像生成、ストーリーボードの試作 |
音声・音楽系 | RVC、DiffSinger、VoiceVox | 歌声合成、ナレーション、声優置き換え |
文章生成系 | GPT系、Claude、Gemini | ライティング、対話、要約、コード生成 |
音声認識系 | Whisper、DeepSpeech | 音声→テキスト変換、字幕生成 |
画像認識系 | YOLO、ResNet、CLIP | 物体検出、分類、画像と文章のリンク付け |
分類:学習・運用方法別
分類 | 説明 | 関連用語 |
---|---|---|
基礎モデル(Foundation Model) | 汎用的な大規模モデル(未調整状態) | GPT-4, SDXL Base |
ファインチューンモデル | タスクや個人用途に合わせて微調整したもの | DreamBooth, Fine-Tune GPT |
LoRAモデル | 軽量・低コストでの学習手法。差分だけを追加学習 | Stable Diffusion用LoRAなど |
学習済みモデル(Pretrained Model) | 事前に大規模データで学習済のモデル | HuggingFace公開モデルなど |
Adapter/Diffモデル | 学習済モデルに差分を組み合わせて切替可能にする | Adapter、Diffusers |
LoRA(Low-Rank Adaptation)モデルとは、基礎モデルに新しい“個性”や“世界観”を与える拡張パーツのような存在です。
絵柄・表情・雰囲気といった「人間的な部分」を再現するのに向いており、学習コストを抑えつつ、創作に「自分らしさ」や「問い」を付与できる手法です。
モデルが関係し合う例(組み合わせ)
- CLIP × Diffusion → テキストで画像生成
- GPT × RVC → 会話音声ボット
- LoRA × ControlNet → 作風 × ポーズ指定の融合
こうした複数モデルの連携が、クリエイティブ表現の幅を爆発的に広げています。
また、近年注目されているのが、画像・テキスト・音声などを同時に扱う「マルチモーダルAI」です。これはChatGPTやGPT-4oのようなモデルにも採用されています。


実生活での違い
AIモデル | 生成AIモデル |
---|---|
翻訳アプリ:音声を聞き取って翻訳 | 文章作成ツール:会話文を自動で作成 |
顔認識システム:人物を特定 | 画像生成AI:指示に沿った絵を作る |
予測システム:天気予報や売上予測 | 音楽生成AI:オリジナル曲を作成 |
AIモデルと創造性
AIモデルは、創作の道具であると同時に、“問い”を投げかける存在になりつつあります。
LoRAのような技術で「自分の脳内」を可視化し、「これは誰の視点?」「なぜこの表情?」という問いを観る人に託す。
- モデルは 人の感性の拡張
- “個性”や“スタイル”をデジタル的に継承できる
- 「AIだからできる」ではなく、「AIだからこそ、自分にしかできない表現」を問い直せる
現代の作品制作は、AIとともに表現の未来を手探りしています。
そのプロセス自体が、かけがえのない“創造”へと変わっていくのです。